相続と遺贈

相続農地転用

相続と遺贈の違い 「相手に着目」

遺言の文面には「相続される」、「遺贈する」という表現があります。
自分の財産などを生前に自分の意思で引き継がせる役目の遺言には欠かせない表現です。
どちらも遺言者が財産上の権利・義務を移転させる役目を果たす言葉ですが、それぞれ意味が異なります。

「相続させる」と書ける相手

相続とは法定相続人に対して財産を移転させる場合に使用します。
例:長男Aに全財産を「相続させる」→○

法定相続人以外の相手に「相続させる」という表現は使えません。
例:近所に住む配偶者の弟には通院の世話をしてもらったので
    A土地を「相続させる」→×
    A土地を「遺贈する」→○

「遺贈する」と書ける相手

遺贈は法定相続人含めて誰に対しても使用できます。
もちろん法定相続人に対しても使用することはできます。
例:長男Aに全財産を「遺贈する」→○
  生前世話になった病院に全財産を「遺贈する」→○

相続と遺贈の違い 「手続きに着目」

法定相続人以外への財産の移転には遺贈を選択するしかありませんが、法定相続人に対しては「祖相続させる」、「遺贈する」の両方を選べることになります。
しかし、実際に遺言を執行する際にはいくつか違いがあります。

不動産登記

遺言で「相続させる」と書かれている場合には遺言で「相続させる」と指定させた相続人が単独で所有権移転の登記申請をする事ができます。
また、「相続させる」場合には登記が無くても法定相続分は第三者に対して権利を主張できます。

一方「遺贈する」と書かれている場合には他の法定相続人と共同で所有権移転登記をする必要があります。
海外や遠隔地に住んでいる法定相続人がいる場合や、法定相続人との関係が良好でない場合には手続きに時間を要するかも知れません。
遺贈の場合は「相続させる」場合と異なり、登記をしなければ第三者に対して権利主張ができません。

農地移転

「相続させる」と指定された農地は農地法による許可が不要となります。
「遺贈」の場合には農地法による農業委員会又は知事の許可が必要となる場合があります。

住宅等の賃貸借

賃貸住宅(借家権)や借地の上に自己建物を所有している(借地権)の場合には「相続させる」とされた場合には賃貸人の承諾は不要で権利が引き継がれますが、「遺贈」の場合には賃借人の承諾が必要となるので、法定相続人が住んでいる住居を引き継がせる場合には注意が必要です。

NGワード

遺言に「譲る」や「差しあげる」、「与える」という表現は文面から「遺贈」と判断されるので避けた方がよいでしょう。
特に法定相続人に対してはメリットがありません。

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